朝の霜

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暖かくなり、また雪が降り、また暖かくなる

ゲルは羊の毛をフェルトにし、天幕としている
ただの天幕であり、たいそうに屋根としているようなものではない
内も外も空虚であるということの快さが解放感をつくりあげているようにおもう

古代のチュルク族の謳った詩 「勅勒歌」 古謡を漢詩に翻訳したものがこれである


  勅勒川       勅勒の川(チュルクの川)

  陰山下       陰山の下

  天似穹廬      天は穹廬(きゅうろ)に似て

  籠蓋四野      四野を籠蓋(ろうがい)す

  天蒼蒼       天は蒼々(そうそう)

  野茫茫       野は茫茫(ぼうぼう)

  風吹草低見牛羊   風吹き草低く牛羊(ぎゅうよう)を見る



穹廬とは包(ゲル)のことである

天は穹廬(ゲル)のように大きく半円をなしている という大きなイメージが核になっている
さらに、そのゲルが天までにも膨らんで、四野を蓋のようにおおっている、と謳う

この6世紀の詩句によって、草原の説明は尽きている

天は蒼蒼であるし、野は茫茫であるのも見たとおりである
はるか地平線に牛羊を見るというあたりに、遊牧民族の幸福が言いあらわされている
そして夜、人は包に憩う 天窓からのぞく星をみる

ひょっとするとほんとうに天そのものが穹廬ではないか、という思いが満ちあふれる   
                                               司馬遼太郎より
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by mongoling-yanwoo | 2011-03-31 11:24 | モンゴル | Comments(0)
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